経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(5)

原油価格急騰は「革新軸」樹立のチャンスでもある

田中直毅
執筆者:田中直毅 2008年7月号

 マグロ漁船は休漁、長距離定期航空路は大幅な減便など、原油価格の急騰のなかで、企業経営者の行動は厳しい現実を瞬間的に受け入れたうえで合理的選択へという色彩を帯びることになった。企業の生き残りを至上の目標として、損失の最小化を図るという現実主義が、世界的にも支配的になったのだ。 現実主義は理想主義に対比され、国際政治における主権国家の選択肢を論ずる立場を表現する言葉であった。たとえば核兵器による抑止という概念を認めることなくして、外交上の政策選択を論ずることは不可能という認識に直結した。しかし冷戦の終焉とともに現実主義という分類は消滅したかのようである。なぜならば、与えられた現実から出発することが外交政策上当然のこととされるに至り、現実主義が特定の立場を指すことはなくなったからだ。 現代を生きる企業経営者にとって現実に沿うことは余りにも当然であろう。しかし短期間に原油価格が約四倍となった一九七三年と七九年とを起点とする二度の石油危機の折には、企業が現実主義的行動をとることは必ずしも容易ではなかった。それは西側先進国だけをとってみても各国政府の置かれた立場も対応もまちまちで、混乱を極めていたからである。現実主義的行動を企業がとるには、政策の枠組みについての見極めが欠かせない。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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