四川大地震で生じた「首相と軍」の亀裂

執筆者:藤田洋毅 2008年7月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾

被災地を駆け回った温家宝が、進まぬ救援活動に苛立ち、ある一言を発すると……。対立している場合ではなかろうに。「一言だけだ。人民が諸君を養っているのだ。諸君は自ら考えて行動せよ(我就一句話、是人民在養ニ們、ニ們自己看着ベン)」――温家宝首相の口から苛立ちの怒声が飛んだ。 五月十二日、「建国以来、最も深刻な被害を最も広範囲にもたらした」四川大地震が発生。交通・通信網が途切れ孤立した地区には落下傘部隊を送り込み被害状況を把握する作戦を立てた。ところが、正確な地図は揃わず山崩れで地形も変化、加えて地上からの誘導はなく地震で地磁気が乱れ電子機器も不安定、折からの大雨という「極端に劣悪な天候」(「空軍報」)まで重なった。十三日午前、ようやく第一陣が輸送機に乗り込んだとの報告を受け、痺れを切らせていた温は部隊指揮官との電話連絡のなかで「発怒(怒りを爆発)」させたのだ。 中国人は「自己看着ベン」に、「いかに行動するか、いちいち指示を仰がず自分の頭を働かせろ」「もはや言い訳は聞かない。死ぬ覚悟で飛べ」といった意味合いを汲み取る。軍幹部の一人は、より直截に「任務を果たせなければ責任を問う」との含意は明白といった。

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