特集●石油が「エネルギーの主役」を降りる時 サウジアラビアの「用意周到」は何を意味するのか

執筆者:畑中美樹 2008年8月号
エリア: 中東

 一バレル一四〇ドル。投機対象となった現在の原油価格について、ことさらの説明は必要ないだろう。かつて原油の価格決定権を奪い合った産油国と消費国は、適正水準の二倍にまで膨れ上がった価格を下げることができない。価格形成の仕組みはすっかり壊れてしまったのだ。実はいま、私たちは「石油の時代」の大きな転換点に立ち会っている。世界最大の産油国と、その原油をとめどなく使ってきた消費国に兆している変化をみてみよう。世界一の産油国が急ぐ「脱原油」 サウジアラビアを巨大な鋼鉄の管が貫いている。アラビア半島を横断する原油パイプライン。全長千二百キロに及ぶ油送管はオイルマネーで潤う砂漠の王国を支える大動脈だ。 パイプラインの東端に広がるのは、アラビア湾(ペルシャ湾)に面したジュベール工業地帯。製油所や石油化学工場、淡水化プラントなどが整然と建ち並ぶ世界最大の石油化学コンビナートで、作られた石化製品は主にアジア向けに輸出される。 だが、ジュベールは数年後に「世界最大」の称号をサウジ国内の別のエリアに譲ることになる。「ラスタヌラ・コンビナート・プロジェクト」。ジュベールから南に下ったラスタヌラの地を舞台に、世界最大の原油埋蔵量を一手に扱う国営石油会社(サウジアラムコ)と世界最大のプラスチック・化学品メーカー(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー=米国)が手を組んだ。両社はプラントの建設・所有・操業を共同で手がける。プロジェクトへの投資額は二兆円をはるかに超えるとされる。

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執筆者プロフィール
畑中美樹 1950年東京都生れ。慶應義塾大学経済学部卒業。富士銀行、中東経済研究所、国際経済研究所、国際開発センター エネルギー・環境室長などを経て現職。中東・北アフリカ地域で豊富な人的ネットワークを有する。著書に『石油地政学――中東とアメリカ』(中公新書ラクレ)、『オイルマネー』(講談社現代新書)、『中東湾岸ビジネス最新事情』(同友館)などがある。
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