特集●石油が「エネルギーの主役」を降りる時 始まった「次なるスター」発見の“良き先陣争い”

執筆者:五十嵐卓 2008年8月号

 世界最強の自動車メーカー、トヨタ自動車が苦しみ始めた。最大の収益源である米国市場の六月の新車販売台数は前年同月比二一・四%減と落ち込み、目前に迫っていた米ゼネラル・モーターズ(GM)からのトップ奪取はならなかった。GMやフォードとの競争で劣勢に立ったわけではない。一バレル百五十ドルに迫るほどの原油価格高騰を受け、ガソリンが一ガロン(約三・八リットル)四ドル台にまで上昇、米国市場の自動車販売に急ブレーキがかかったからだ。今や、トヨタの最大のライバルは上昇する原油価格といっても過言ではない。 投機マネーが主因となった原油価格の高騰は、二十世紀から続いてきた石油など化石燃料主体の世界のエネルギー秩序、産業構造を崩し始めた。折しも人類共通の課題となっている地球温暖化防止のための化石燃料の消費削減という潮流は「脱石油」「脱化石燃料」を加速させる。「百五十ドル原油」の先に姿を現わそうとしているのは、二十一世紀の新しいエネルギー秩序であり、エネルギーをめぐる産業構造の激変なのだ。 大阪府堺市の新日本製鉄の製鉄所跡地にタワークレーンが林立し、巨大な建設工事が急ピッチで進んでいる。シャープの薄型テレビ用の液晶パネル工場だ。総投資額一兆円ともいわれる世界最大の液晶パネル工場だが、この工場にはもうひとつの製品でも世界最大級の冠がつく。太陽光発電パネルだ。シャープは奈良県の葛城工場などで太陽光発電パネルを生産、現状でも年間七十一万キロワットのパネル生産能力を持ち、ドイツのQセルズなどと世界トップを争う。だが、堺新工場ではそれを上回る年間百万キロワット分のパネルを製造する計画だ。

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