東アジアの構図を揺さぶる馬英九という「変数」

執筆者:野嶋剛 2008年8月号
エリア: アジア

“新任の総統”馬英九は、なぜ少数の強硬派を抑えきれなかったのか。尖閣問題は今後、馬政権を縛るとともに、日本にも難題に――。[台北発]二つの「釣魚台」をめぐり、東京、北京、台北の東アジア三極が絡み合い、火花を散らした。 六月中旬、かつて田中角栄らあまたの要人を迎え、現在は六カ国協議の舞台でもある北京外交の表玄関、釣魚台迎賓館で、中国の胡錦濤国家主席と、台湾の江丙坤・海峡交流基金会理事長(対中交流窓口トップ)が握手をかわし、中国と台湾の対話が九年ぶりに復活した。そのとき、はるか南方の東シナ海に浮かぶ尖閣諸島(台湾名=釣魚台、中国名=釣魚島)で、台湾の遊漁船が日本の海上保安庁の巡視船と衝突、沈没した事件で、台湾の反日行動が一気に燃え上がったのである。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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