世界で穀物が高騰し、食糧危機が迫る中、わが国は「逆方向」の農政を墨守している。やがてコメ不足、米価高騰、そして農業崩壊が……。 妥結するかに見えた世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉が、アメリカと中国・インドの対立で暗転、七月二十九日、決裂するに至った。途上国(インドなど)が農産品に対する緊急輸入制限を行なう条件の緩和を求めたが、アメリカが拒否したのだ。農業関係者は、若林正俊農林水産大臣(当時)、加藤紘一元自民党幹事長、谷津義男元農相ら与党農林族幹部、宮田勇JA全中(全国農業協同組合連合会)会長(当時)らが大挙ジュネーブに駆けつけていた。関税削減が主要テーマの中、コメだけでなく乳製品、麦、砂糖など一二%にも及ぶ品目の高い関税を守りたい日本だったが、関税削減の例外扱いが認められる「重要品目」の数について、盟友と思っていた欧州連合(EU)から四%という低い数字を突き付けられた上、ラミーWTO事務局長に「原則四%、追加の譲歩付きで六%」とする裁定案を提示される状況に追い込まれていた。関係者は、米印中の対立で合意に至らず胸をなでおろしたことだろう。
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