“幸運”にも恵まれたサミット警備の舞台裏

2008年9月号
カテゴリ: 外交・安全保障
エリア: 日本

 北海道洞爺湖サミットは大きな問題もなく終わったが、警察当局が動揺した局面もあった。過激な反グローバリズム勢力「ブラックブロック」の入国が確認された時だ。過去に身柄を拘束されたことがないメンバーの人定はできておらず、また出身国以外の第三国を経由して来日した場合に把握が遅れるなど、重い教訓が残った。 それでも警備陣は僥倖に恵まれた。千人以上が参集するとみられていた韓国の「全国民主労働組合総連盟」は、米国産牛肉輸入再開をきっかけにした国内での抗議デモに集中し、来日したのは数十人。「韓国の内政混乱に救われた」(警察庁幹部)。 一方、防衛省にとってのヤマ場は本番直前。懸案の航空機テロへの実動訓練だった。ハイジャック機がサミット会場に向かうとの想定で首相が治安出動を発令し、航空自衛隊の戦闘機で撃墜するオペレーションを実施。自衛隊の治安出動に批判的だった警察も、警察力では対処できないと観念して参加。「避難誘導中の政府要人が退避不能になり、撃墜は不可避」という、会場警備を担う警察には屈辱的なシナリオも受け入れた。 訓練では内閣官房安全保障・危機管理担当が全閣僚に担当者を張りつけ、電話連絡で治安出動に関する閣議決定を一分間で済ませる手際の良さをみせた。「警備全体の統括は内閣官房が担うべき」(防衛省制服組幹部)との評もあるが、これはサミットの統括役ながら警備に疎い外務省への批判でもある。

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