安全保障かクジラか リムパックの“難題”

2008年9月号
エリア: 日本

 二年に一度行なわれる環太平洋合同演習「リムパック」。今年も六月二十九日から七月三十一日まで実施され、主催国のアメリカ以下、参加国は十カ国を数える過去最大規模となった。 そもそもリムパックは東西冷戦期の一九七一年、ソ連の太平洋進出を阻むため環太平洋の国々で始められ、日本も八〇年から参加している。その後のソ連崩壊で演習の目的はテロとの戦いへシフトしたが、ここに来て「エコ」という難敵が現れた。 発端は二〇〇四年七月。約百五十頭のクジラが、ハワイ・カウアイ島に迷い込むという事件が起きた。これを調査した米海洋大気局(NOAA)が、「リムパックが原因の可能性が高い」との調査報告を発表する。 当時、カウアイ島沖ではリムパックの真っ最中で、複数の軍艦や潜水艦が活動中だった。演習では音波で水中の物体を探知する「ソナー」が使用される。この音波が海洋哺乳類の方向感覚を狂わせている、というのだ。 そこで〇六年に、環境保護団体が米海軍のソナー使用禁止を求めロサンゼルス連邦地裁に提訴。その後、両者はハワイ諸島四十六キロ以内でのソナー使用禁止、使用に際してはクジラの活動を監視する、との内容で和解したが、軍はリムパック〇八の開始前の会見で「環境問題を第一に考える」と語るほど、神経質な対応を強いられている。

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