権限奪う「医薬品庁」新設に厚労省がおとなしいわけ

2008年9月号
エリア: 日本

 政府・与党は「医薬品庁」の新設に向け、検討を始めた。これまで問題の多かった薬事行政を一元化し、厚生労働省とは別の組織に担わせる構想だ。表向きの狙いは「薬害の再発防止」だが、その内実はどうか。 構想は自民党主導で動き出した。官僚は権限縮小に何より敏感なはずだが、厚労省の抵抗は弱い。理由は二つ。一つは、エイズ、肝炎と相次ぐ薬害で監督責任を問われ、「薬事行政を手放したい」と思っていること。もう一つは、技官としての省内の地位が医師より低い薬剤師が、新組織で“独立王国”を築くのも悪くないと考え始めていることだ。 ただ、自民党の足並みもそろっていない。厚生族は、厚労省の医薬品規制部門を、薬の審査を行なう独立行政法人と統合させて医薬品庁に衣替えさせる意向。主眼は「薬害防止」だ。他方、商工族は、厚労省内の産業振興部門と独法との統合も視野に入れる。こちらの狙いは国民の要請の強い「薬の承認・審査の迅速化」だ。「薬害防止」と「産業振興」は一見、相反するだけに、新組織の全体像はまだ見えない。それでも、福田首相肝煎りの「五つの安心プラン」の「厚労省の信頼回復策」で検討される運びで、政治の風向き次第で急に実現性が高まる可能性もある。

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