ブックハンティング・クラシックス (42)

雄弁と類稀な実務能力を武器にアフリカで孤軍奮闘した日本人

執筆者:平野克己 2008年9月号
タグ: 日本 経済 日銀
エリア: アフリカ

『ルワンダ中央銀行総裁日記』服部正也著中公新書 1972年刊(現在は古書としてのみ入手可能) 開発や援助の分野で世界的に知られた日本人といえば大来佐武郎、緒方貞子の両名がまず挙がるだろうが、ここにいま一人、その業績と知見を忘れずにとどめておきたいと思う人物がいる。こんにちにいたるまで、日本人のなかではもっとも高いポストに就いてアフリカ開発に携わった人物のことである。 服部正也は一九一八年に三重県で生れた。父親の転勤でロンドンに七年、上海で三年を過ごしたのち、長崎県の大村中学から一高、東大法学部へ進んだ。卒業後は海軍に所属しラバウルで終戦を迎えている。語学力を買われオーストラリア軍との連絡将校、ラバウル戦犯裁判所で特別弁護人を務めたあと一九四七年に復員、日本銀行に入った。五〇年にはフルブライト留学生として渡米、ミネソタ大学大学院で学んだのち、パリに駐在。そして外国局渉外課長であった六五年、IMF(国際通貨基金)に請われてアフリカ中部の内陸国ルワンダ共和国へ中央銀行の外国人総裁として赴任する。

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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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