中国の農村で目にとまった数々の「吃驚スローガン」

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2008年10月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾

「湘」の別名を持つ湖南省は天下の米どころで知られ平野部が多いが、西隣の重慶市などと接する湘西地区は違っていた。高い山が重なるように続く少数民族の居住区で、山の斜面に棚田が点在し、山間を縫うように道路が走る。そんな湘西の一角にあり苗族が多く住む吉首市で、九月初め多くの住民が暴動を起こした。全国どこでもみられるようになった地方政府と手を組んだ悪徳不動産業者によるサギ紛いの取引が原因だ。香港の中国人権民主化運動情報センターは「それまで押さえていた社会への不満が五輪閉幕で噴出」し暴動を惹起したとするが、やはり「それまで押さえていた社会への不満」の内実が知りたい。 今年のゴールデンウイーク、湖南省の中西部を歩いた。上海と雲南省の省都・昆明を結ぶ高速道路を西に向い湘西に近づくにしたがって風景は一変し、長沙、南岳、衡陽、邵陽など昨日まで見てきた建設ラッシュに沸く東部や中部の大都会とは大違い。貧しい農村が出現する。雄大な自然のなかに点在する農家の日干し煉瓦の壁に大きく鮮やかに書かれたスローガンは、江沢民前政権で「三農問題」と一括りにされた農業・農村・農民が抱える深刻な現実を皮肉なまでに鮮やかに描きだしていた。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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