クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

アメリカン・ドリームのオバマに一抹の不安

執筆者:徳岡孝夫 2008年10月号
エリア: 北米

 アメリカが世界で最も強く最も豊かだった頃のことだ。いまは亡きパン・アメリカン航空は、客があってもなくても、一日も休まずに東回りと西回りの世界一周便を飛ばしていた。どちらかが001便、逆方向が002便だった。むろんジェット旅客機が就航してからの話である。 西回り便は夕方に東京(羽田)を発つ。香港かマニラを経てバンコク、ラングーンという順に刻んでいく。ニューデリーで真夜中になり、カイロかアテネで夜が明ける。昼前にパリまたはロンドンに着く。旅客機は今日より頻繁に給油しなければならなかった。当時の日本人は好んでJALに乗ったから、この東京発夜行便は空いていた。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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