【ブックハンティング】サラリーマン神話を作った男 李明博大統領の波乱の半生

執筆者:久保田るり子 2008年11月号
カテゴリ: 国際 書評
エリア: 朝鮮半島

 このところ韓国の影が薄い。 今春の「竹島(韓国名・独島)問題」は、度肝を抜かれた。韓国は大真面目に「独島防衛訓練」を行なった。あなた方は本気で「日本が海を渡って攻めてくる」と考えている? 日本は、「李 明博大統領の韓国」に期待を寄せていた。反米親北の「革新韓国」とはお別れ。未来志向で実利的で、「過去にとらわれない成熟した日韓関係」が約束されたはずではなかったか。 ところが、李政権にはいまだに存在感というものが希薄なのだ。竹島軍事演習はナショナリズムの発露であったが、李政府が「民意を意図的に刺激した」ようにも見受けられた。これが、韓国を代表するCEO(最高経営責任者)型大統領、李氏の目指すリーダーシップなのか。日本は戸惑った。 そんなおり、自身の生い立ちをその時代背景とともに随想風につづった『李明博自伝』が日本で刊行された。この本は原題を「神話はない」といい、一九九五年に韓国で最初に出版された。数多い李明博本のなかでも代表的な作品である。 この本に読む李氏は合理性の人である。 例えば全斗煥政権やこれに続く盧泰愚政権時に、現代建設の社長として、力にものを言わせる権力サイドと闘った話が出てくる。情報機関の地下取調室に連行され、現代グループは「金大中らに政治資金を提供しているのだろう」と問い詰められ脅迫されても、李社長は頑として否定、屈しない。また、別の場面では現代グループに自動車部門からの撤退を迫る権力側に李社長は、「競争と公正なルールこそが経済の原動力だ」と、毅然と正面から闘う。このときの統合回避が、「いまの韓国の自動車産業を育てる基礎になった」と自ら高らかな自負を持って書いている。

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