北方領土の「私有化」が進んでいる

名越健郎
執筆者:名越健郎 2008年12月号
エリア: ロシア 日本

日本とロシアの関係は、いま変化しつつある。領土問題の解決に生かす手もありそうだが、他方で障害の発生も――。 七月の日露首脳会談で決まったプーチン・ロシア首相の年内訪日計画に対して、米政府が日本に横槍を入れてきたことはあまり知られていない。 米国は八月のロシア軍によるグルジア侵攻を非難し、ロシアを国際社会から孤立させる外交を進めている。欧州連合(EU)もロシアには冷淡で、プーチンはグルジア戦後、一度も外遊していない。ロシア側はプーチン訪日を国際的孤立を脱却する突破口と期待しているが、米側は外交ルートを通じ、この時期にプーチンを訪問させないよう日本政府に水面下で求めたという。 ロシアがプーチン訪日を重視するもう一つの理由は経済的な要請だ。グルジア侵攻に伴う外資の逃避や米国発金融危機がロシアを直撃し、十月の株価は五月の最高値から七割も暴落。推定七百億ドルの資金が海外に逃避した。通貨ルーブルは一割以上下落し、成長率鈍化やインフレを招き、一部企業による大量解雇も伝えられた。ロシア経済を支える原油価格も急落し、予算編成の基準とした一バレル=七十ドルの想定線を割り込んだ。 急激な経済情勢悪化は、ロシアの高度成長が石油依存経済であることを改めて示した。欧米からの孤立下での疲弊が、実体経済のまだ堅調な日本への期待感を高めている。

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執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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