行き先のない旅
行き先のない旅(67)

ロンドン金融街が味わう「切り裂き魔」以上の恐怖

大野ゆり子
執筆者:大野ゆり子 2008年12月号
カテゴリ: 国際 金融
エリア: ヨーロッパ

 ロンドンの金融街シティに勤務していたイギリス人の友人と、先日、久しぶりに会った。 十数年前、彼がスイスの金融グループ、UBSに勤務していた頃からの知り合いである。ロンドンのUBSには、当時スポーツ・エンターテインメント部門という部署があった。 プロのスポーツ選手や音楽家は、遠征や演奏旅行で、三百六十五日のうち、ほとんど移動している。行く先は、試合やコンサートツアーの計画によるので、毎年同じところとは限らない。個人の場合、どこか一つの国に活動の「拠点」があり、そこで納税し、健康保険、年金といった社会保障を受けるわけだが、いくつかの国にまたがって移動し、一カ所に滞在することが少ない場合、どこを拠点と呼ぶのか、なかなか難しい。しかも、外国人の場合、受入国から査証や滞在許可証がおりるかどうかという問題が第一にあり、勝手にこちらで「本拠地」を決めるわけにはいかない。日本人のパスポートであれば、煩雑な手続きはあっても、時間さえかければ査証はおりる。しかし、ロシア、中国といった国籍の場合は、もっと複雑になる。 こうした苦労をかかえるスポーツ選手や演奏家のために、労働法や税法を専門とする弁護士、公認会計士など専門家集団を紹介し、合法的に「本拠地」作りを手助けするのが、UBSの彼の部門の仕事であった。共演したことがあるロシア人のソプラノ歌手が、アメリカ永住権取得を目指したときに協力を頼まれたのが、彼と知り合った縁だった。

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執筆者プロフィール
大野ゆり子
大野ゆり子 エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
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