スキージャンプの「栄光」をこのまま失速させるのか

執筆者:生島淳 2009年1月号
カテゴリ: スポーツ 金融

 トリノ五輪のスキージャンプの代表である伊東大貴(二二)が、「就活」で苦戦を強いられた。 伊東は現在のジャンプ界ではエース格の選手。しかし二〇〇八年九月に札幌に本社を置く所属先の土屋ホームが経営再建のためにスキー部の縮小を発表、伊東は〇八年いっぱいでの退社を余儀なくされた。 五輪一年前の大切なシーズン目前で、木下義幸監督は選手の引き受け先を求めて自ら三十社以上を会社訪問したが、色よい返事は、ひとつとしてもらえなかった。日本を代表する選手の所属先が決まらないという異常事態である。 背景には姉歯秀次元一級建築士が火を付けた「耐震偽装問題」がある。この問題によって改正建築基準法が〇七年に施行され、審査が厳格化し、マンションなどの着工件数が激減し建築業界は窮地に陥った。さらにアメリカ発の金融危機が、不動産関連会社の資金繰りを悪化させ、それがスポーツの世界にまで影響を及ぼしている。 もともと北海道に本社を置く企業にとって、ジャンプのチームを持つことはステイタスにつながった。一九七二年の札幌五輪の七十メートル級(現在のノーマルヒルに相当)ジャンプでは笠谷幸生、金野昭次、青地清二が表彰台を独占した。三人がそれぞれ所属していたのが、ニッカウヰスキー、北海道拓殖銀行、雪印乳業だった。いずれも北海道の名門企業である。

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執筆者プロフィール
生島淳 1967年生れ。広告代理店勤務を経て93年よりライターとして活躍。著書に『大国アメリカはスポーツで動く』(新潮社)など。
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