【インタビュー】長尾ひろみ(神戸女学院大学文学部英文学科教授) プロフェッショナルであるべき「法廷通訳人」という存在

執筆者:田中朝美 2009年1月号
カテゴリ: 社会
エリア: 日本

 被告人、裁判官、検察官、弁護士、書記官、傍聴人――刑事裁判というと、これらが頭に思い浮かぶ。しかし、それは被告人が日本人の場合だ。日本語の分からない外国人が被告人や証人となる裁判では、「法廷通訳人」が必要になる。二〇〇九年五月からスタートする裁判員制度では、対象となる年間約三千件の事件のうち、外国人を扱う事件は約一割になる見込み。 神戸女学院大学で学生に通訳学などを教える長尾ひろみ教授は「裁判員制度が始まれば、通訳人のさらなる質の向上が求められることになる」と分析する。実は、長尾さんは、教授という肩書きの他に法廷通訳人の顔を持つ。法廷通訳歴(言語は英語)二十五年の大ベテランだ。「法廷通訳人」と聞くと、名前のイメージから難関試験を潜り抜けないと法廷に立てないのではないかと想像する人もいるかもしれない。だが、実際は、裁判所の面接を経て通訳人として登録される仕組み。公的な試験がないため、現在、五十六言語、約三千九百名の通訳人がいるものの、人によって質に大きな差があるのが実情だ。 現状で裁判員制度がスタートするとどうなるのか。 これまでの裁判は、調書などの書面が重視される書面主義。通訳人は事前に書類を手に入れられるため、裁判の流れをある程度想定することが可能だった。しかし、裁判員制度では、一般の人にも分かりやすい裁判の進行が求められるため、被告人質問や証人尋問といった法廷でのやり取りがより重視される「口頭主義」へと舵が切られる。当然、通訳人の関与も大きくなる。誤訳があっても誰も気づけない可能性が高いだけに、その役割は重要だ。

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