中国2トップの間に吹き始めた「すきま風」

執筆者:藤田洋毅 2009年1月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾

夫婦のように寄り添ってきた総書記と首相に、微妙な違いが見え始めた。「身内」の争いは、温攻撃を強める保守原則派の思うツボ……。「楊刀刀のお母さんはどこに消えたのか」「被和諧了(「調和」させられたのさ)」 二〇〇八年七月、「楊刀刀(ナイフの楊さん)」こと楊佳(二八)が上海市公安局の分局を襲撃した事件については、九月号(20頁)で紹介した。六人を殺害し四人に重軽傷を負わせた凶悪事件にもかかわらず、人々の怒りの的となっている公安局(警察)を襲った楊には同情が集まり、「英雄」と讃える声もネットで飛び交った。 折しも北京オリンピックの直前。社会の「安定」を最優先した当局は「一週間以内」のルールを破り初公判を延期。五輪後の九月一日、一審が死刑判決を下す。楊は控訴したが、十月二十日に上海市高級人民法院が一審判決を支持し死刑が確定した。 楊の母・王静梅さんは、事件翌日、北京の自宅から姿を消していた。派出所員に連れ出され、北京市公安局直轄の病院に「精神病を治療するため強制入院させられた」という。楊の両親は離婚している。当局は「唯一の家族である母を隔離して訴訟をスムーズに進めようとした」のだ。冒頭の“小咄”は、社会の和諧(調和)を乱す犯罪分子の母が「強制的に調和させられた」の意。胡錦濤政権が執政理念に掲げる和諧社会建設を強烈に皮肉っている。

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