インテリジェンス・ナウ
インテリジェンス・ナウ

廃棄された数千件のファイル「核の闇市場」捜査の幕引きが進む

春名幹男
執筆者:春名幹男 2009年3月号
カテゴリ: 国際

「核の闇市場」のネットワークで世界に核技術を拡散したパキスタンの「核兵器の父」A. Q. カーン博士(七二)が、このほどイスラマバード高裁の決定で自宅軟禁を解かれた。 実はこの事件をめぐっては、昨年末にも、核の闇市場に関する情報を米中央情報局(CIA)に通報したスイス人技術者、ウルス・ティナー容疑者(四三)が処分保留のままスイス捜査当局から釈放されている。 カーン博士が突然パキスタン国営テレビで「外国への核技術拡散」を告白して以来、ちょうど五年。イランや北朝鮮などにまでウラン濃縮技術を供給したこの事件も幕引きか、と思わせる動きが続いているのだ。 だが、この新事態の裏に、意外な事実が隠されている。 ティナー容疑者は弟、父とともに、マレーシア企業「スコミ・プレシジョン・エンジニアリング」(SCOPE社)で、ウラン濃縮装置製造に関する技術顧問をしていたと言われる。SCOPE社は、カーン博士のネットワークに参画したドバイ、シンガポール、トルコ、南アフリカ共和国、スイス、韓国の企業とともに、ウラン濃縮装置の部品を製造していた。 ネットワークの存在が白日の下にさらされたのは、二〇〇三年十月のこと。ドイツ企業所有の貨物船「BBCチャイナ号」をドイツとイタリア当局が海上で臨検、イタリアのタラント港で検査したところ、六個のコンテナからSCOPE社のマークが付いた木箱入りの遠心分離機部品が見つかった。リビア向けのウラン濃縮用遠心分離機部品を載せていたのだ。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順