経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(13)

金融危機で露見した欧州中央銀行の「端役」ぶり

田中直毅
執筆者:田中直毅 2009年3月号
エリア: ヨーロッパ

 グローバリズム、リージョナリズム(地域主義)、そして主権国家の権限と責任という三層構造の中で、世界的な資金凍結を解く試みが続く。かくする中で欧州連合(EU)内部での亀裂が明瞭になってきた。欧州統合の目標を定めたローマ条約の締結期にまで戻るとは考えられないが、共通通貨ユーロ創設の条件を具体的に決めた一九九七年のアムステルダム条約締結直前の「足並みの乱れ」にまで戻るのではないか。そしてこの乱れは、ドル本位制に続くはずの国際金融システム新構築の試みにも、間違いなく影響を与えよう。 オランダと英国という、EU内部で最もグローバリズムになじんできたはずの二国が、主権国家内部の安定性の維持という伝統的な目標達成のために、金融不安と金融機関不信に対して“オイル・フェンス”で囲いをしたところからEU内の主権国家間のぎくしゃくが始まった。 ベルギーとオランダの合同設立銀行フォルティスの救済をめぐる昨年九月からの金融不安の中で、オランダ政府が採用したのは、主権国家オランダの内部のフォルティス資産の国有化と負債の保証であった。預金者に安心感を与えるとともに、オランダの金融機関に対して「与信に二の足を踏むには及ばない」という明瞭なメッセージを発信したのだ。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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