日本企業買収「ミタルの脅威」は去ったのか

景気後退でフトコロが苦しくなり、他社の買収どころではないとの声もあるが、逆に「今こそ」優秀な日本企業を狙うとの見方も……。[ジャカルタ発]「もうミタルには、買収なんてそんな余裕はないんじゃないのかな」。昨年十二月三日、インドネシアの首都ジャカルタを訪れた神戸製鋼所の犬伏泰夫社長はそうつぶやいた。犬伏社長が初めて足を踏み入れたこのジャワ島は、鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタルを率いるラクシュミ・ミタル会長の“創業の地”でもある。 ミタル氏はここから事業を始め、わずか二十年足らずで世界中の鉄鋼メーカーを次々と買収し、鉄鋼王にのし上がった。この二年余り、買収の矛先は日本など北東アジアの大手鉄鋼メーカーに向いていると噂されてきた。日本、韓国、中国のメーカーの粗鋼生産量は実に全世界の四五%を占めるうえ、中国を中心に今後も旺盛な鉄鋼需要が見込めるからだ。この地域はミタルにとって唯一の生産拠点の空白地帯。とりわけ日本には、鉄鉱石から銑鉄を生産するための高炉を持つ高炉大手が新日本製鉄やJFEスチール、神戸製鋼所など四社もあり、いつどこが買収対象になってもおかしくなかった。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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