【ブックハンティング・インタビュー】海堂尊(作家、医師) 問題提起を続ける作家の怒りの医療ミステリー

執筆者:田中朝美 2009年3月号
カテゴリ: 書評

「書けなくなったら、僕は作家をやめます」 二〇〇六年、処女作『チーム・バチスタの栄光』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し鮮烈デビュー。瞬く間に医療ミステリー旋風を巻き起こした海堂尊氏は、こう言い切った。理由は「エンドポイント(死)が分かっている人間だから」だそうだ。 海堂氏は医師だ。一般の人よりも「死」に近い分、もし「作家としての死」が訪れたとしても、それに客観的に対応できるということなのか。 そんな海堂氏の「客観的視点」がたっぷり入った最新作が本書『イノセント・ゲリラの祝祭』だ。厚生労働省が主催する「医療事故調査委員会」創設を目指した検討会を舞台に、官僚、病理医、法医学者らそれぞれの思惑を描きながら、厚労省による医療政策の愚を浮かび上がらせる作品だ。「医療事故調査委員会」とは、医療過誤で患者が死亡した場合などに、警察がすぐに介入するのではなく、まずは委員会という第三者機関を作って真相を究明していこうという制度だ。 これは、現実世界でも厚労省が設置を検討している。二〇〇一年に幼い少女が手術ミスにより死亡した東京女子医大病院事件など、医療側の隠蔽工作などが次々と明らかになり、患者側の医療不信が増す中で、事実を知りたいという声に呼応して動き出したものだ。医療側にも、適切な処置をしたとの証明が委員会の場で出来れば、闇雲な捜査や医療訴訟を避けられるメリットがあるとみられる。既に厚労省は、昨年六月に委員会設置に向けた大綱案をまとめている。

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