急成長の「汚水再利用」で競う東レと三菱レイヨン――水の世界をリードする日本の「膜」技術 2

執筆者:船木春仁 2009年3月号

「油を買うには土産がいるだろうな」――日本における海水淡水化の技術研究は、こんな一言から本格化した。命を受けたのは当時、工業技術院の研究員だった後藤藤太郎(現・造水促進センターエグゼクティブアドバイザー)。一九六九年、第一次オイルショック(七三年)が起きる前のことである。後藤は海水の分析と脱塩技術の研究に着手する。後に後藤は、サウジアラビアでの蒸発法や濾過膜を利用した海水淡水化の技術指導にもあたった。 中東の人々にとって水はどのようなものなのか。後藤は、「砂漠のオアシスとは井戸であり、その権利は実に厳格。他人の井戸の水を勝手に飲むと殺されてもおかしくないとさえ言われる。海水淡水化は、『アラーからの贈り物』と喜ばれた」と語る。 中東を中心に世界で海水淡水化プラントの導入が相次いでいる。しかし、「海水淡水化以上に伸びて、主戦場になる」といわれているのが下廃水の再利用プラントだ。主にトイレ用水や農業用水として使われる「中水」を造る設備だが、飲料水まで造れるプラントもある。 後藤も、「中東に淡水化プラントが導入されて三〇年以上が経ち、設備更新の時期を迎えているが、併せて汚水を再利用するプラント建設にも資金が投じられている。海水淡水化はコストが高く、飲料水ならともかく生活用水などに使うには金がかかりすぎる。アラブ世界では、一度体内を通った水は不浄とされ、飲料水はもちろん、農業用水にも使わないが、牧草用などの間接的な使用ならば許されている」と語る。

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