米欧の間で始まった非難と課税の応酬 危機で強まる保護主義

2009年3月号
エリア: ヨーロッパ

 米欧間で貿易摩擦が激化しつつある。金融危機による深刻な景気後退に加え、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の停滞で、米欧ともに経済保護主義に走り始めたといえそうだ。 貿易摩擦の新たな火種になっているのは成長促進ホルモンを使った米国産牛肉。健康を損なう恐れがあるとして欧州連合(EU)諸国は一九八〇年代から輸入禁止措置を取ってきたが、米国が一月中旬に唐突に問題を蒸し返した。米国は三月から報復関税の対象品目を拡充すると通告。欧州産のロックフォールチーズやトリュフなどの関税を従来の三倍に引き上げ、穀物や肉類、ミネラルウォーターなども追加すると伝えた。 EU・欧州委員会のアシュトン通商担当委員は通告直後に「新たな制裁措置は違法であり、極めて遺憾だ」との声明を発表。EU企業が損害を被るとみて直ちにWTOに提訴するほか、米政府の自動車支援に対しても提訴に動く。欧州のロックフォールチーズ生産者やフランス政府なども対米関税の大幅引き上げを求めてEUへの政治的な圧力を強めており、欧州委員会も譲歩はできない状況だ。 昨年七月のWTO閣僚交渉の決裂直後から貿易紛争の下地はあった。EUがバナナの輸入関税を巡るWTO判定を不服として、WTO上級委員会への上訴を決めたのは同年八月。旧欧州植民地のバナナ産地を優遇しているとの米国の訴えを認める判定を一旦は受け入れたが、これに再び異議を唱えた。ドーハ・ラウンドが進まない以上は譲歩の必要もないというわけだ。

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