中東―危機の震源を読む (52)

ドバイとサウジアラビアの「補完関係」考

執筆者:池内恵 2009年4月号
エリア: 中東

 三月の初頭に駆け足でアラブ首長国連邦(UAE)のドバイを経由してサウジアラビアの首都リヤドを訪れた。まず経由地のドバイの現状と将来を考えてみたい。 昨年十一月号(十月十八日発行)の本欄では、金融危機のドバイへの波及可能性について検討した。そこで焦点は、証券市場の下落がバブル化したドバイの不動産市場に波及するか否かにあると指摘しておいた。 湾岸ウォッチャーが息をひそめて見つめる中、決定的な衝撃を与えたのは、十月二十四日にインターネットで配信された『MEED』誌の報道。椰子の木型の人工島パーム・ジュメイラで知られる政府系不動産開発会社ナヒールが、第二の人工島パーム・ダーイラの浚渫工事を停止したというのだ。不動産需要の落ち込みと価格の下落は著しく、買い手がつかない物件が続出して市場が定まらない状態である。急激な信用収縮により、ドバイ企業は資金調達に困難をきたしている。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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