ソニーと日産「衰退の構図」の轍を踏むなかれ

執筆者:新田賢吾 2009年4月号
カテゴリ: 経済・ビジネス 金融

景気悪化のせいだけではない。両社の赤字転落は、モノづくりの力を無くした日本の製造業すべての未来を映す鏡だ。 ソニーと日産――。都会派で、スタイリッシュなイメージを持つ両社には他にも似通った点がある。日本で創業し、今も本社が日本にある企業だが、ソニーはハワード・ストリンガー、日産自動車はカルロス・ゴーンという外国人トップを戴き、二〇〇九年三月期にソニーは一千五百億円、日産は二千六百五十億円のそれぞれ最終赤字に転落する。 金融危機に端を発した世界経済の急激な悪化で、世界中の企業が大きな打撃を受けているが、ソニーと日産の落ち込みは、パナソニック、トヨタ自動車といった同業他社の赤字転落とは違ったニュアンスで受け止められている。ともに製造業として深刻な構造問題を抱えたまま今回の危機に突入し、回復のシナリオ、危機後の成長戦略が描けない企業になってしまっているからだ。ソニー、日産の不振は単なる一時的な需要減退による業績不振とは言い切れない。むしろそこに浮かび上がるのは、日本の製造業が直面する「衰退の構図」である。「三年後に何をつくっているか、わからない企業」。一九六〇年代から八〇年代にかけてのソニー全盛期、ソニーの実質的なトップであった盛田昭夫は、しばしば自社をこう定義したという。今の事業の延長線にはない、誰も見たことのない製品をつくりだそうという風土を社内に広げる狙いだった。実際、六〇年代に開発したトリニトロン方式のカラーテレビ、七〇年代に製品化したベータ方式のビデオレコーダー、七九年に発売した携帯音楽機器「ウォークマン」、八〇年代のコンパクトディスクと八ミリビデオなど、ソニーが世界で初めて切り開いた技術、商品分野は少なくない。まさに研究開発を成長の源泉とする創造性の塊のような企業だ。

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