【ブックハンティング】誰よりも「細部」に迫った意外で痛快なアメリカ論

執筆者:草生亜紀子 2009年4月号
カテゴリ: 国際 書評
エリア: 北米

 向井万起男氏にはいくつもの「自分だけの聖地」がある。たぶん。テキサス州の州都オースティンから南東へ三百キロ、人口約七千人の小さな町クリスタル・シティもその一つだ。「ホウレン草の世界首都」を名乗るホウレン草の産地で、市内には空を見上げるポパイの像がある。そんな「面白い物」は「一度見ておく価値がある」と考えた向井夫妻は、一九九七年の夏休みのドライブの途中、遠回りしてこの町に立ち寄った。 ところが、そこで出会ったのは、第二次世界大戦中に日系人を中心にドイツ系およびイタリア系住民を収容した全米最大の強制収容所跡。アメリカ史の汚点のひとつである。この出会いで、「ポパイ通り」と「7番通り」に挟まれた草地が、向井氏にとっての「聖地」となった。 帰国後、クリスタル・シティの収容所について「調べまくった」向井氏は、二〇〇〇年、一人でかの地を再訪する。収容所跡がきちんと残っているかを確認するために。その後、日系人強制収容について調べたテネシー州の高校生のレポートをインターネットで発見し、指導教諭とメールで温かい交流をする。さらに〇四年、〇八年とクリスタル・シティ詣でを繰り返す。その間に、跡地には強制収容の歴史を伝える石碑が増え、植樹もされて綺麗になっていた。

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