「二段階世襲」を目指す金正日の焦り

平井久志
執筆者:平井久志 2009年5月号
カテゴリ: 国際
エリア: 朝鮮半島

 北朝鮮は四月五日、「人工衛星」と称して長距離弾道ミサイルを発射。九日に最高人民会議第十二期第一回会議を開催し、金正日総書記を国防委員長に三選、金正日体制の第三期をスタートさせた。 金総書記の動画が公開されたが、左手などの動きが不自然で、昨年夏に脳卒中などに襲われたのが事実であることを示唆した。歩行や書類をめくる動作などはこなしてみせたものの、衰えは隠せない。これまでのように一から十まで自分で決裁することは肉体的、精神的にも困難だ。そこで軍や党の業務を国防委員会各メンバーにある程度委任する、いわば「分担委任統治」の形で体制を維持していくのではないかとみられる。 その意味で最も注目された国防委員会の人事では、金永春人民武力相と呉克烈元総参謀長を副委員長に起用し、委員をこれまでの四人から八人に倍増。金総書記の義弟の張成沢党行政部長や禹東則国家安全保衛部首席副部長、金正覚軍総政治局第一副局長、朱相成人民保安相、朱奎昌党軍需工業部第一副部長を新たに委員に起用した。軍、軍需産業、党、警察、公安機関から側近を起用し、国防委員会を強化したことがわかる。 金日成主席が一九九四年に死亡して以降、朝鮮労働党大会、党中央委員会は一度も開かれず、党政治局の機能は停止状況だ。国防委員会は「国家領導体系の中枢」といわれるようになったが、下部組織や地方組織などはない。今回の国防委強化は国防委を国家の指導体制の中枢に位置づけ、実質的には「政治局」の役割を果たさせる意図とみられる。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
逆張りの思考
価値あるバックナンバー
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
最新コメント
最新トピック
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順