ようやく緒に就いた水ビジネス「総力戦」――水の世界をリードする日本の「膜」技術 4

執筆者:船木春仁 2009年5月号

 それは「黒船襲来」と騒がれた。二〇〇六年、仏ヴェオリア(正式にはヴェオリア・ウォーター・ジャパン)が、広島県の広島市西部水資源再生センター、埼玉県の市野川浄化センターと荒川上流浄化センターの施設運営のすべてを請け負う包括委託契約を相次いで落札したときのことである。 落札金額は広島が約二九億三〇〇〇万円、埼玉が約六億五〇〇〇万円。特に広島は、役所側が想定した設計予算は三四億円で、役所自身が破格の応札額に驚いたというエピソードが残っている。広島市は、この契約により三年間で約七億五〇〇〇万円の経費を削減できた。 ヴェオリアは、世界六〇カ国、約一億三一〇〇万人に上下水道サービスを供給している世界最大の上下水道運営事業者だ。売上高は約一兆六〇〇〇億円。仏スエズ、豪テムズ・ウォーター(本社は英ロンドン)の“水メジャー御三家”の筆頭に立つ。運営方法は、単純な労務提供や、公共機関が建設した施設を長期リースされて自ら運営するもの、水道事業の実施権限そのものを委譲されているものなどさまざまだが、三社だけで世界の民間上水道事業の八割を占め、給水人口は三億人を超えている。一五〇年の蓄積に対抗するには ヴェオリアが日本法人を設立したのは〇二年。翌〇三年に上下水道の包括的な運営受託が民間企業にも許可されるのを見越しての進出で、日本国内で水関連企業のM&A(合併・買収)を繰り返し、着々と地盤を固めてきた。満を持しての大型案件受注が広島と埼玉だった。

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