苦肉の巨大化に走る製薬業界の宿命

執筆者:清水常貴 2009年5月号
タグ: アメリカ 日本

相次ぐ大型買収で独占的な強みをもつ企業の誕生かと思いきや、実は苦肉の策なのだという。クスリの世界の現実とは――。 製薬業界に再び大型買収旋風が吹き荒れそうだ。世界最大の製薬会社、米ファイザーが米ワイスを六百八十億ドル(約六兆八千億円)で買収すると発表すれば、世界八位の米メルクも米シェリング・プラウを四百十一億ドルで買収すると発表。日本のアステラス製薬が米バイオベンチャー、CVセラピューティクスに対する十一億ドルのTOB(株式公開買い付け)に失敗したのを嘲笑うかのような大型買収なのである。「ファイザーの売り上げは四百四十四億ドルで、国内最大手の武田薬品工業の四倍もある。買収されるワイスでさえ武田より大きい。両社が合併すると、売り上げが単純計算で六百三十億ドルという巨大製薬会社が誕生する。同様にメルクの売り上げは武田の倍で、シェリング・プラウも武田を上回っており、合併後には四百二十四億ドルに達する世界第二位の製薬会社になる。桁違いの規模です。世界四位のスイスのロシュは抗癌剤で有名なバイオベンチャー、米ジェネンティクを四百六十八億ドルで完全買収すると発表しているし、世界二位の仏サノフィ・アベンティスでも最高経営責任者(CEO)が合併を模索していると社内向けに語ったことが伝えられている。製薬業界では各方面に大型合併が波及しそうです」(日本の製薬会社幹部)

カテゴリ: 経済・ビジネス
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