スイスを追いつめる「タックスヘイブン」包囲網

執筆者:石山新平 2009年6月号
カテゴリ: 国際 金融
エリア: ヨーロッパ

金融危機以降、スイスの「銀行守秘義務」への圧力が強まっている。狙いは莫大な脱税資産。熾烈な闘いが始まった。 金融王国スイスが追いつめられている。欧州アルプスの山中にある人口七百五十万人余りの小国ながら世界有数の豊かさを誇ってきたのは、言うまでもなく金融業の隆盛による。その隆盛は同国がこれまで頑なに守り続けてきた「銀行守秘義務」によるところが小さくないのだが、その銀行守秘義務が各国の標的となり、米国と欧州連合(EU)による包囲網の中で、風前の灯火になっているのだ。 銀行守秘義務とは、銀行が顧客の情報を第三者に漏らしてはいけない、というルールで、スイスでは法律に明記されている。一見当たり前のように思えるが、その第三者に「外国政府」や「税務当局」も含まれるところが銀行守秘義務の本質だ。例えばドイツ人がスイスに口座を開き、脱税した未申告の資金を持ち込んだとしよう。ドイツの税務当局が脱税を摘発しようと、スイスの銀行に口座の照会をしても、銀行は一切答えないのだ。犯罪がらみの資金の場合、スイス政府が預金を凍結するなどの措置を取ることになっているが、スイスでは脱税、つまり申告漏れは犯罪ではないのだ。 結果、世界の大金持ちたちは、スパイ小説さながらに“秘密口座”をスイスに開き、脱税した資金をせっせと運び込んでいる、というのがドイツを中心とするEUや米国の長年にわたる批判だった。つまりスイスは不正な資金を世界中から吸い寄せている、その温床が銀行守秘義務だ、というわけだ。

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