進路を探しあぐねる農林中金のジレンマ

執筆者:本田真澄 2009年6月号
エリア: 日本

二兆円近い出資とひきかえに年間三千億円の利益配当を迫られる農中。だが、肝心のビジネスモデルが定まらない。「グローバルな目線で、かつ慎重な投融資スタイルにより、国際的に存在感のある金融機関へ」――。 四月二十八日、農林中央金庫(農中)は、経営安定化計画(二〇〇九―一二年度)を打ち出した。農中は、〇九年三月期に六千百億円の経常赤字に陥っており、この日、業績予想の下方修正も発表した。 巨額損失の主因は、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)を組み込んだ欧米の証券化商品を大量に買い込んでいたことだ。昨年十二月末時点での保有額は六兆円以上。その評価損で市場には一時、債務超過説が流れ、永田町では公的資金注入や日本政策投資銀行との合併説さえ取り沙汰された。慌てた農中は、JAグループ傘下の都道府県信連(信用農業協同組合連合会)や農協、グループの保険事業を担う全国共済農業協同組合連合会(全共連)から、後配出資と永久劣後ローンで約一兆九千億円の増資をかき集め、経営危機説にとりあえずフタをした。そして、経営安定化計画で新たなビジネスモデルを提示してみせたのである。 この四月から、農中は新体制となった。理事長職はそれまで農林水産省の事務次官経験者の「最高の天下り指定席」だったが、巨額投資損失に伴い、九年近くも居座り続けた上野博史理事長が辞任。四月一日から、一九二三年の設立以来はじめて生え抜きの河野良雄副理事長がトップに昇格した。「新たな経営戦略のスタート」のアピールは、そうしたタイミングでなされたのだが、農中が掲げたビジネスモデルは「珍無類」(メガバンク関係者)と揶揄されている。その評価は、国内最大規模の機関投資家が直面する深いジレンマを示している。

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