饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(137)

フランス料理を「文化」にしたジスカールデスタンの慧眼

西川恵
執筆者:西川恵 2009年6月号
カテゴリ: 国際 文化・歴史
エリア: ヨーロッパ

 フランスはサルコジ大統領の音頭で、フランス料理をユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録すべく大々的な運動を展開中だ。フランス人シェフたちも賛同し、これに関する限り、毀誉褒貶の多い同大統領も国を挙げての支持を受けている。 世界各国で正餐のときの料理とされているフランス料理だが、この伝統を引き継いできたシェフたちの功労にフランス政府が公に報いたのはさほど昔ではない。料理界で国家功労のレジオン・ドヌール勲章を最初に授けられたのは一九七五年、ヌーベル・キュイジーヌの旗手、ポール・ボキューズだった。 それまでは厨房にこもって働く職人としかみられていなかったシェフたちが、このときフランス料理という偉大な文化の担い手であると認められ、その地位向上に大きく貢献した。 叙勲はこの年の二月二十五日、エリゼ宮(大統領官邸)で行なわれた。ときのジスカールデスタン大統領(一九七四―八一年)は記念の昼食会を催し、料理をボキューズ本人のほか、名立たるシェフたちにエリゼ宮の厨房で競作してもらうという前代未聞の趣向を凝らした。 そのメニューのコピーが私の手元にある。つい最近、ボルドーワインの代表団がプロモーションで来日した折、知り合いでシャトー・ドフィネ・ロンディヨンの経営者、サンドリーヌ・フロレオンさんからもらったものだ。彼女はボキューズと親戚で、私が饗宴メニューを集めているのを知って融通してくれた。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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