成長シナリオを描けない電力会社の不安

執筆者:新田賢吾 2009年8月号

トンネルを抜け出たかに見える電力業界だが、楽観はできそうにない。電力会社を待ち受ける幾多のリスクを検証する。 電力会社の経営は、この一、二年激しく揺さぶられてきた。原油価格の高騰で燃料費が急膨張する一方、発電コストの安い原子力発電所がトラブルの連続で相次ぎ停止し、稼働率が低下していたからだ。二〇〇九年三月期は電力十社(沖縄電力含む)のうち五社が経常損失、六社が純損失を出した。最大手の東電は純損失が〇八年三月期に千五百一億円、〇九年三月期に八百四十五億円と二年連続の巨額赤字を計上した。 ただ、今期は燃料費も落ち着き、新たな燃料費調整制度の導入で、コストが増加しても迅速に電気料金に転嫁できるようになる。原発も〇七年七月の新潟県中越沖地震で全面的に運転を停止していた東電の柏崎刈羽原子力発電所が運転再開に向け本格的に動き出すなど状況は一気に好転する。実際、見通しを発表していない東電を除くと、今期は九社すべてが経常利益で黒字化し、八社が純利益で増益となる。関電は経常損益が二千億円以上改善する見込みだ。東電にしても柏崎刈羽が七号機を手始めに運転再開が進めば、今期二千億円以上の経常利益を出せるとの予測も出ている。電力業界の業績はトンネルを抜ける。

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