「戦時体制」に一変したアメリカの新型インフルエンザ対策

執筆者:松尾理也 2009年9月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

[ニューヨーク発]「われわれは新種のウイルスが存在する世界に生きている。やることをやらずに後悔するよりは、やり過ぎたほうがいい」 世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)を宣言した六月、米国の感染症対策を担う疾病対策センター(CDC)のトム・フリーデン所長(四八)はそう語った。 今回の新型インフルエンザウイルス(H1N1型)は、過去のウイルスが六カ月以上かけて拡がった範囲に六週間足らずで到達。WHOは感染状況の逐次発表には意味がないと判断し、七月六日をもって集計値の更新を停止した。その時点で、米国の感染者は三万三千九百二人、死者は百七十人と世界最多。二番目に多いメキシコ(一万二百六十二人、百十九人)を大きく上回っていた。 その後、七月二十四日までに米国の感染者は四万三千七百七十一人、死者は三百二人に増加した。CDCは六月二十五日に米国で当局が把握していない感染者は延べ百万人に達するとの推計をまとめている。 なぜ米国でここまで感染が拡大したのか。カギは感染者が最も多く確認されているウィスコンシン州にありそうだ。同州では二〇〇五年にH1N1型の豚インフルエンザウイルスが発生、その後、国内で散発的に発症例が確認されるようになった。そのことから、今回の新型インフルエンザは米国で発生した「北米かぜ」と考えられているが、「どうせ今までと同じだろう」とたかをくくり、メキシコで“最初の症例”が確認された際に初動が遅れ、封じ込めに失敗した――感染症対策関係者の多くはそう見る。

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