ヒュームが考察した「貿易の嫉妬」と市場社会の未来

執筆者:堂目卓生 2009年9月号
タグ: イギリス

 十八世紀のヨーロッパにおいて、人間学があらゆる学問の基礎になると強く主張したのは、イギリスの哲学者デイビッド・ヒューム(一七一一―七六)である。 ヒュームは、人間界についてはもちろん、自然界についても、それを知覚し理解するのは人間なのであるから、私たちはまず「人間とは何か」ということから考察しなくてはならないと考えた。そして、人間は、聖書に即して神秘的に理解されるのではなく、ニュートンの方法、すなわち経験と観察を通じて理解されるべきだと考えた。彼の『人間本性論』(一七三九―四〇)は、こうした目的と方法にもとづいて書かれた人間学の金字塔である。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
堂目卓生(どうめたくお) 大阪大学大学院教授。1959年生れ。京都大学大学院博士課程修了(経済学博士)。18世紀および19世紀のイギリスの経済学を専門とし、経済学の思想的・人間学的基礎を研究。おもに英語圏の学術誌で論文を発表してきた。著書『アダム・スミス――「道徳感情論」と「国富論」の世界』(中公新書)でサントリー学芸賞受賞。
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