景気後退で激しさを増す国際“税”摩擦

執筆者:加瀬友一 2009年9月号

アジアの各地で企業と税務当局のトラブルが頻発している。原因は移転価格税制。国際ルールづくりを急がなければ、企業は泣き寝入りだ。 七月某日、都内で開かれた日本自動車工業会の委員会でのこと。会議が終わって散会となるや否や、経団連の関係者の席に、ある自動車メーカーの担当者が青い顔をして駆け寄ってきた。「当社のアジア現地法人がとんでもない事態に陥っています。窮地から抜け出す知恵を授けてください」 この自動車メーカーは、アジアの新興国の税務当局から執拗な追徴課税の要求を受けて苦悩していた。担当者の必死の形相に気圧されて、経団連の面々はタジタジだった。 問題は「移転価格税制」である。世界各地に進出した日本企業、とくに東南アジア諸国や中国で生産分業を加速する自動車・電機業界の多国籍企業が、企業内の貿易に絡む納税で進出先の税務当局とのトラブルに巻き込まれる事例が急増している。 昨年秋に世界を襲った金融危機、そして世界市場の冷え込み……。グローバル展開を進めてきた日本企業は、売上高の急激な落ち込みによる赤字を少しでも埋めようと、海外の子会社から懸命に資金を日本に還流させようとしている。 ところが、そうした企業の苦肉の策に対し、進出先の国の税務当局が「待った」をかけてきた。移転価格税制を盾に「本社に利益を移転せず、しっかり現地で法人税を納税せよ」と迫っているのだ。

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