北朝鮮「権力継承」に兆した大変化

執筆者:平井久志 2009年10月号
エリア: アジア

後継体制作りが進められてきた北朝鮮で、七月以降、幹部がこの問題を封印し始めた。一体何があったのか。「現時点で後継者問題は論議されていない」 北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長は、九月十日に共同通信との会見でそう語った。金正日総書記に次ぐ政治序列第二位の人物の発言は、北の内部で大きな変化があったことを示している。 今年に入ってから、北朝鮮は金総書記の三男・正雲氏への権力継承の地ならしを進めてきた。六月十日付の労働新聞は金総書記が党での活動を開始したときは「二十代の若さだった」と強調する政治論文を載せた。二十二日付、二十三日付にも後継問題を示唆する論評が掲載され、二十七日付では「世代が何百回代わろうと変化することがないのが白頭山の血統だ」などと「世襲」の正統性が強調された。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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