黒土流出が招く「食料庫」のピンチ

執筆者:西原哲也 2009年10月号
タグ: 中国
エリア: アジア

 中国の食糧事情を脅かす大問題が持ち上がっている。中国の食糧庫と呼ばれる東北三省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)を中心に「黒土」の流出が加速しているのだ。東北部は中国の穀物生産の約二割を担う貴重な食糧庫だけに、危機感は強い。 黒土とは、植物質や有機質を含む肥沃な土壌で、固まりにくい上に保水・保肥性が高く、耕作用としては最高の土壌といわれる。ウクライナの大平原、米国ミシシッピ川流域、そして中国東北部の三江平原が“世界の三大黒土地帯”とされ、貴重な穀物輸出基地となっている。 ところが中国東北部の大部分では、一九八〇年頃に平均八十―百センチあった黒土層が既に二十―三十センチまで減少、現在では四十センチある“優良地”はまれになっているという。専門家らは、最短あと三十年で黒土が全て消失してしまうと予測している。

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