80時間世界一周 (62)

ニューヨークで想起した「黒人パワー」の源流

執筆者:竹田いさみ 2009年10月号
エリア: 北米

 ニューヨークのJFK国際空港に到着し、ターミナルに足を一歩踏み入れて気付くのは、アフリカ系黒人の存在感である。駐機場を含め空港内のいたるところで黒人ばかりが目に付く。空港を離れ、イエローキャブのタクシーに乗れば、大半の運転手は黒人だ。タクシーを下車し、マンハッタン島の目抜き通りに聳える高層ビルへ入れば、警備員や受付として働いているたくさんの黒人に出会う。 金貨や銀貨など時代物のコインを扱う骨董屋を覗いたときも、店内で警備をしていたのは黒人だった。この店に入ったのは、十六世紀の英女王エリザベス一世時代に鋳造された銀貨に興味があったためだ。しかし、人気商品のため在庫切れ。眼光は鋭いが、あくまで穏やかな口調の店主らしき人物が近寄り、「父親のヘンリー八世の銀貨ならあります」と教えてくれた。大きな顔立ちのヘンリー八世が刻印された本物の銀貨が目の前に差し出され、値段を見ると一万二千五百ドル(約百十七万円)也。やはりニューヨークに無い物はないと、世界の富を引き付けるその強大な磁力に圧倒される。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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