金正日との「グランド・バーゲン」は可能か

執筆者:平井久志 2009年11月号
エリア: アジア

もはや交渉相手の「翻意」は期待できない。国内の工業・農業事情が深刻さを増す中、金総書記は最後の闘争を仕掛けるが――。 十月五日、北朝鮮の金正日総書記は、中朝国交樹立六十周年を記念して訪朝した中国の温家宝首相との会談で「米朝協議の行方をみながら、六カ国協議を含む多国間の会談を行なう用意がある」と語った。 金総書記は九月に訪朝した中国の戴秉国国務委員との会談でも「二国間および多国間の対話を通じた問題解決」を表明している。六カ国協議に復帰する可能性を改めてちらつかせ米朝協議を実現させようとする今回の発言は、わずかな譲歩で大きな対価を獲得しようとする北の「サラミ外交」の典型であった。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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