産業スパイ事件の陰で過熱する資源価格攻防戦

執筆者:新田賢吾 2009年11月号

高騰を続ける資源価格と、その価格決定方法に、新興国が不満を抱いている。需要家とメジャーの戦いはさらに激しさを増すだろう。 今年七月五日午前、英豪系資源メジャー、リオ・ティント社の上海事務所に、中国国家安全部の係官が突然乗り込み、鉄鉱石貿易の責任者であるスターン・フー氏ら四人を連行するとともに家宅捜索を開始した。国家安全部は防諜・治安を担当する組織で、民間企業には通常は関わりがない。後に明らかにされた産業スパイ容疑で、初めて国家安全部が関与した理由がはっきりした。 リオ社員が中国の鉄鋼メーカー幹部に賄賂を贈り、各社の鉄鉱石の需給や調達に関する情報を入手。中国との鉄鉱石価格交渉で優位に立ち、結果的に中国側に巨額の損失を与えたというものだ。中国側の主張では損害額は「六年間で七千億元(九兆四千億円)」に達する。リオ側は容疑を全面否定するとともに不当逮捕と国際社会に訴えている。事件はリオ社員が拘束されたまま、長期化しそうな気配だ。 中国は年間五億トン以上を生産する世界最大の鉄鋼生産国。片やリオ・ティントは同じ英豪系のBHPビリトンやブラジルのヴァーレと並び鉄鉱石生産のトップスリーのひとつ。三社とも非鉄金属、石炭なども合わせ持つ巨大な資源メジャーだ。需要家と資源メジャーのかつてない泥仕合の背景にあるのは、資源の供給や価格決定をめぐる主導権争いだ。中国、インドなど新興国の資源需要が着実に拡大するなかで、需要家対メジャーの闘争が今後、一段と激化するのは確実だ。

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