ノーベル平和賞は「古い欧州」の陰謀か

執筆者:名越健郎 2009年12月号
エリア: ヨーロッパ 北米

 ノーベル平和賞は本来、欧州知識人の理念を反映した政治的な賞であり、選考には「古い欧州」の利害が絡んでいる。 英紙タイムズも「選考委員会の決定は極めて政治的だ。過去6人の受賞者のうち3人はブッシュ大統領の政敵だった」と書いた。2002年のカーター元大統領、05年の国際原子力機関(IAEA)、07年のゴア元副大統領はブッシュ政権に批判的で、欧州の味方だった。「平和賞は底意地の悪い欧州人が米国の凋落を早めようと仕掛けた罠」(外交専門家)とのうがった見方もある。 2009年の平和賞に決まったオバマ大統領は「自分は賞に値しない。驚き、恐縮している」とコメントしたが、ベテラン政治家なら受賞を辞退したかもしれない。平和賞が制約となり、外交選択肢が狭められるからだ。泥沼化するアフガニスタン戦争やイラク戦争、テロとの戦いで実力行使をためらうことも予想される。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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