中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(61)

オバマの中東外交―その言葉の「力」と「限界」

池内恵
執筆者:池内恵 2010年1月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中東 北米

 ワシントン滞在の終盤に入ったが、所用により一時日本に戻った。ワシントンを発つ直前に、ウッドロー・ウィルソン・センターで研究成果の一部発表を行なった。十月はじめにワシントンで調査を始めたころは、「オバマ政権の中東政策」という研究課題を示すと、「評価するには時期尚早」という反応が多かった。しかし十二月半ばになって、近辺の大学・研究機関や政策シンクタンクで、オバマ政権の中東政策を検証する趣旨のシンポジウムや講演が次々に開催されるようになっている。 十二月一日にオバマ大統領がウエストポイント陸軍士官学校で講演し、アフガニスタンへの増派を含む新戦略を発表したことが大きな区切りとなり、中東政策や外交政策全体について、オバマ政権の初年度を評価する機運が高まっている。 私の見立てでは、オバマ政権の一年目の中東政策の特徴は、「オバマ自身の魅力」の影響力に依存した、「言葉の力」への確信とも言うべき自信に支えられていた点である。 オバマが大統領として最初の単独テレビ・インタビューを与えたのは、アラビア語国際衛星放送局アラビーヤだった(二〇〇九年一月二十七日放映)。ここでオバマは「コミュニケーション」という言葉を三度も使った。「私の仕事は伝えることだ」「われわれの用いる言葉が、重要だ」と述べて、米国とアラブ世界・イスラーム世界との間の良好なコミュニケーション回路設立こそ自らの使命と自任していることを示した。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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