CT市場「世界三強」と渡り合う東芝の技術革新――医療機器産業の可能性を探る 2

執筆者:船木春仁 2010年1月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

 青森県弘前市の弘前大学医学部附属病院の一室に、公開されることもなく大切に守られてきた装置がある。後に日本学士院会員に選ばれ、文化勲章も受章した放射線医学者、高橋信次が、教授時代の一九五三年に開発したX線回転横断撮影装置だ。 一メートル四方の台座の上に椅子が置かれ、正面に太い棒がある。椅子に座った被験者は、台座内のモーターでゆっくりと回転する。棒から発せられたX線は、体を透過して椅子の背部にあるフィルムに写る。撮影角度を変えた何枚かの写真を撮れば体内の横断像が得られる。 現在のX線CT(Computed Tomography=コンピュータ断層撮影)の原理を示す先駆的な装置だ。CTは、一九七二年に英EMI社のハンスフィールドによって世界で初めて実用化されたが、その原型は二〇年近くも前に弘前で造られていた。撮影装置は「Takahashi Tomography」と呼ばれ、海外でも高い評価を得た。 ハンスフィールドのCTは、X線の発見以来の発明とされ、これで彼は、一九七九年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。しかし一九八五年七月、スウェーデン王立科学アカデミーは高橋に、その死去から三カ月という異例の早さでゴールドメダルを授与する。業績を、ノーベル賞に匹敵するものと認めたのだ。

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