中国が強化する「ソフトパワー戦略」の胸算用

執筆者:藤田洋毅 2010年2月号
エリア: アジア

海外メディアに任せていては“痛い腹”を探られる。ならば自ら発信しようと巨費をつぎ込む。中国らしい長期戦略だが……。 新中国成立六十年を祝う国慶節は二〇〇九年十月一日。最新「国産」兵器の初公開を目玉に、台頭する中国の「今」を映し出す一大イベントだった。江沢民前総書記が十年前に指揮した軍事パレードに比べ、飛躍的にして着実な軍備強化が世界の耳目を奪ったのは記憶に新しい。その時、まったく話題にはならなかったが、見逃してはならないシーンがあった。天井の開いた特別車に乗る胡錦濤総書記(国家主席)が天安門から走り出し、北京のメインストリート・長安街に整列した兵士を閲兵する姿を、特別車の前方から追う撮影クルーが二つあったことだ。国営テレビ局・中国中央電視台(CCTV)の独擅場だった国慶節の実況中継に、同じく国営の通信社・新華社の撮影隊が新たに参入したのである。

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