経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(24)

軛から解き放たれたブラジル経済の躍進

田中直毅
執筆者:田中直毅 2010年2月号
エリア: 中南米

 昨年二〇〇九年はブラジルの年と総括される日も来るのではないか。株価指数の上昇率をドル建てで表示すると、外国人投資家にとっての収益率となるブラジルの株価指数は一四〇%を上回り、一二〇%台の中国やロシアを抑えて世界一となった。ホット・マネーと呼ばれる短期資金はブラジル通貨レアルの対ドル上昇率が年間で三〇%を上回る状況のなか、ブラジルに殺到した。 こうした投機資金の流入によりインフレの火種が播かれることを嫌い、十月からは三カ月未満の短期資金に、二%の「関税」を賦課した。この臨時収入は社会的支出にあてる。 ブラジルの好調はラテンアメリカ諸国に確実に好影響を与え始めた。アルゼンチンとチリのドル建ての株価指数は八〇%台の上昇、コロンビアやベネズエラでも七〇%前後の上昇となった。米国の株価指数が二〇%程度の回復にとどまったことを考えれば、ラテンアメリカ諸国の米国離れがついに実現したともいえる。思えば二十世紀が米国の世紀だったことが、ラテンアメリカ諸国に無用の軌道外れを強いた面がある。北方の巨人からの解放が、新しい地平をブラジルを筆頭とするラテンアメリカ諸国に用意しつつあるのだ。二十一世紀は間違いなく彼らにとって新しいものになりつつある。勝利したのは市場メカニズムである。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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