病院の「貧困ビジネス」を防ぐ処方箋

執筆者:鈴木亘 2010年2月号
カテゴリ: 社会 金融
エリア: 日本

一部の大都市にはホームレスや高齢の日雇労働者を喰らう「病院ネットワーク」が存在する。全国に広がる前にとるべき対策は――。 さすがに流行語大賞にノミネートされることはなかったものの、景気急落、雇用悪化といった世相を反映して、昨年、マスコミに頻繁に登場した言葉が「貧困ビジネス」である。 これはしばしば「下流喰い」とも呼ばれるように、日雇労働者や派遣労働者、生活保護受給者といった最下層の貧困者から様々な形で不当な利益を貪るビジネスのことだ。ゼロゼロ物件、保証人ビジネス、一部の悪質な無料低額宿泊所や人材派遣会社などがその代表とされる。「ゼロゼロ物件」とは、入居時に敷金・礼金を必要としない賃貸物件を指す言葉だが、家賃の支払いが一日でも滞ると、毎月の賃料に違約金が上乗せされたり、高額の遅滞損害金をとられるなどのトラブルが続出している。また、「保証人ビジネス」は、金融機関や消費者金融から融資を受ける際に業者に登録料や紹介料を支払い連帯保証人を紹介してもらうもので、多重債務者同士を組み合わせて相互保証させるといった悪質なケースも報告されている。 そして今、驚くべきことに、一部の病院までもが貧困ビジネスに手を染めつつある。もともと高い倫理観と社会的使命を持つ医師たちに対する規制や法律は、「性善説」に立って作られているため、現在は無きに等しい状況である。それを逆手にとって、病院が貧困ビジネスを開始した場合、歯止めが利かないことから最も凄惨な下流喰いと化す。「ヒポクラテスの誓い」を捨てた病院ほど恐ろしい存在は無い。

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執筆者プロフィール
鈴木亘 1970年生れ。上智大学経済学部卒。日本銀行勤務。大阪大学大学院修了(経済学博士)。大阪大学社会経済研究所、日本経済研究センター、東京学芸大学を経て、2009年4月より現職。規制改革会議専門委員(保育担当)。主著に『生活保護の経済分析』(共著、東京大学出版会、第51回日経・経済図書文化賞)、『だまされないための年金・医療・介護入門』(東洋経済新報社、第9回日経BP・BizTech図書賞)がある。
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