ハイチの“孤児”をどう救うのか

執筆者:ルイーズ・ブランソン 2010年3月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中南米

[ワシントン発]女優のアンジェリーナ・ジョリーや歌手のマドンナが、カンボジアやマラウィなどの赤ん坊を養子にして以来、外国の子供を養子にするのは、アメリカでちょっとした流行のようになっている。
 そうした中でいま注目を集めるのが、ハイチだ。というのも、マラウィをはじめとする国々が養子縁組に対する規制を強化したからだ。ただし、少なくともいまのところ、ハイチ政府は首相が署名した文書がない限り養子手続きを止めており、大地震を生き延びた子供たちの身元確認が最優先されている。
 ハイチからの養子問題が大きな注目を集めるきっかけになったのは、男女五人ずつの十人からなるアメリカ・アイダホ州のキリスト教宣教団の存在だ。彼らは一月十二日にマグニチュード7の大地震がハイチを襲うや、できるだけ多くの“孤児”を「キリスト教下の安全な環境」に連れ帰ろうと、現地に駆けつけた。
 だが、彼らの目論見ははずれ、しかもメディアで一大センセーションを巻き起こすことになった。公式の書類もなしに、三十三人のハイチ人の子供を連れ、国境を越えて隣のドミニカ共和国に入国しようとして逮捕されたからだ。
 それからというもの、この十人の命運は、テレビドラマのような展開を見せている。彼らにかけられた容疑は誘拐で、もし有罪になれば最長懲役二十四年が科される罪だ。だが、その裁判は三カ月先まで始まらないかもしれない。十人はボロボロの刑務所に入れられ、一時はコンクリートの床で寝ることになった。首都ポルトープランスの裁判所に出廷するため車に乗せられた宣教団のリーダー、ローラ・シルスビーは、待ち構えていた報道陣にこう語った。
「きっと神様が、良い結果をもたらしてくださると信じています」
 だが、そううまくはいきそうもない。
 ハイチ政府は(おそらくは米政府の後押しも受けて)、このケースを一罰百戒のために利用しようとしている。大地震によって多くの裁判官や弁護士らが命を落とし、司法も壊滅状態となっているハイチで、現在、この宣教団に対するものだけが唯一予定されている裁判だ。逆にいえば、それだけこの裁判が重視されているということでもある。十人はいったん帰国し、裁判のために再びハイチに戻ることになりそうだ。
 ヒラリー・クリントン米国務長官は、米政府とハイチ政府がこの問題で協力していることを、繰り返し声明の中で語っている。
「(彼らが裁判にかけられることに)アメリカ政府が暗黙の了解を与えていると考えるのが自然です」。ハイチの子供たちが置かれている危機的な状況が注目を集めるのを歓迎する、ある人道援助関係者は語った。

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執筆者プロフィール
ルイーズ・ブランソン イギリス出身。英『サンデー・タイムズ』紙モスクワ支局長を経てフリーランスに。米『ワシントン・ポスト』紙元モスクワ支局長で夫のダスコ・ドーダー氏との共著に『ミハイル・ゴルバチョフ』『ミロシェビッチ――暴君のポートレイト』がある。
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