火中の栗を拾った「稲盛和夫」が試される晩節

執筆者:杜耕次 2010年3月号
エリア: 日本

JAL再建の舵をとるのは、西郷隆盛を尊敬するカリスマ経営者。無力感が漂う社員の心をひとつにまとめ、“順航”に導くことができるか。 二月二日、羽田空港(東京都大田区)に隣接する日本航空(JAL)の航空機整備場を、前日会長に就任した稲盛和夫(七八)が視察に訪れた。「安全運航を支える縁の下の力をつぶさに見た。彼らが働きがいのある職場に変えていくことが大切」と帰り際に稲盛は語った。 破綻したJALの負債総額は二兆三千二百億円と金融機関を除く事業会社としては過去最大。内紛の絶えない経営陣、八つに分裂している労組、政治家や官僚とのしがらみ、老朽化が深刻な機材――。抱える病巣を数え上げればキリがない。まさに“火中の栗を拾う”形で請け負ったJAL再建の初仕事に整備場視察を選んだのは、現場重視の「アメーバ経営」(社員一人一人がアメーバのように全体調和を目指して能動的に働く)を標榜する稲盛らしい。 今回のJAL会長人事は政治的な背景を抜きには語れない。 昨夏の総選挙で政権を奪取した民主党と稲盛の関係は単なる政党と財界タニマチといった通り一遍のものではない。節目節目で首脳たちに直言し求心力に乏しかった党をまとめ上げるのに大きな力を貸してきた。「稲盛さんがいなければ今の民主党はない」(政界関係者)といわれるほどなのだ。

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